当時の私を振り返ります。
7ヶ月前 2018年10月30日 18時00分 カナダ 首都トロント ピアソン空港
邪魔にならないように短く切りそろえた髪は長いフライトで乱れ、顔には疲れが見てとれる、背の低いアジア人がひとり立ち尽くしていました。
ワーキングホリデービザの手続きは緊張していたのが馬鹿馬鹿しくなるぐらい呆気なく終わり、初めてのネイティブスピーカーの前でも物怖じしていなかったと自分に信じ込ませていまた。
何回旅行をしても、空港の中では気が張ってしまう。さて、ここはどこなのだろう。
右も左もわからないので、Googleマップを開いて、空港から一週間だけ予約してあるホステルの位置はタクシーでいくら掛かるのか調べた。40ドル。12時間のフライトは私の財布の紐を緩くした。
タクシーから眺める景色は私の疲れを癒してくれた。高層マンションが立ち並び、今は遠い東京の様に輝いていて目が眩しい、心が踊った。ここで一年暮らしていくのかと思うと不安よりも期待の方が高まる。
タクシードライバーは西洋人で、夜中のチャイナタウンに一人でタクシーから降りる私を心配してか「気をつけて」 と言って私を降ろしてくれました。
自分で予約したホステルはチャイナタウンの裏にある、普通の一軒家を改装したホステルで私はその中で一番安い部屋を予約していた。レセプションはなく、事前に教えられたナンバーキーでドアを開けると白で統一されたなんの飾りもない味気のない玄関が出迎えてくれた。先ほどまでの高揚していた気持ちが下がっていくのが分かった。
私の部屋はベースメント(地下)にあり、値段相応の小さな部屋だった。小さな部屋には決して似合わないクイーンベットが一つと机と椅子が寂しそうに置かれていた。
兎に角、自分が今どこにいて、どう言うところにいるのか自分の目で見て確かめたくて、重い体に鞭を打って外を出た。口から出た息は白くなって私の前に現れた。
少し歩いただけで自分はあまり治安のいいところにいないことが分かってきた。鼻にツンとくる独特な匂いはヨーロッパにいた時も嗅いだことのある。
「可愛いコートだね、可愛子ちゃん」と西洋人の女性に言われた時は、元彼が誕生日プレゼントに買ってくれたフランスのブランド、アニエス・ベーの黒いコートを着てきたことを少し後悔した。揶揄われ他のだ。
幼少期をインド洋に面した東アフリカにある国タンザニアとマラウイで過ごた。そして、家族旅行はヨーロッパで過ごしたらしいが、旅行の記憶は薄っすらしたものだ。
そして、日本の首都、東京で思春期を乗り越えへ社会人になり、大好きな父を追いかけて海外に出た。ヨーロッパ、中東へ。兎に角、父と同じものが見たくて、経験してみたかった。
父はアメリカ大陸へに行ったことがあるのだろうか、私は知らない。でも父が、何かと、日本はアメリカに負けた国だと言っていたのをよく覚えている。
ちなみに、中東やヨーロッパ、ロシアに住んでいる人間はみんな口を揃えてアメリカをこう言う
生まれて間もない、若い国、歴史のない国
歩いている間は自分がなんでここにきたのか振り返った。チャイナタウンからストリップクラブやパブなどが立ち並ぶ通りを出てダウンタウンまで歩いた。どこまでも。そこに何があるかは分からなくても。背の低いアジア人の私はアニエス・ベーのコートを着て何も怖くないって顔をして、歩いてやった。